日常生活のポイント

オストメイトは、ストーマ装具の装着など不便であることは確かですが、ストーマ装具を装着していれば、多少の不便はあるものの各自の工夫次第で、以前とほとんど変わらない日常生活を送ることができます。ストーマに注意を払うのは当然ですが、必要以上に心配しなくてもよろしいでしょう。

日常生活上のごく一般的な事柄について簡単にまとめてあります。各自で体得されていることに付け加えて頂くとよいでしょう。

食事

バランスの良い食事を1日3回きちんと摂ることが大切です。便の性状や臭い・ガスの発生に影響する食べ物はありますが、控えめに摂るように気をつければ特に問題ありません。食べ過ぎに注意し、よく噛んで食べましょう。珍味などの食べなれない食品は、1日1品として異常がないことを確認するように心がけてください。

イレオストミーの方は、ストーマの出口が未消化の食物で詰まらないように注意してください。海藻類、コンニャク、きのこ、竹の子、豆類、パイナップルなどは、一度に多量に摂取しない、食品を細かく刻む、よくかんで食べるようにします。また、脱水状態にならないように水、野菜スープ、お茶、みそ汁、スポーツドリンクなどで水分を補給しましょう。

ウロストミーの場合、個人差はありますが1日に1,000~1,500mlの尿が排泄されるので、尿路感染、尿の防臭、尿結晶の予防のためにも十分な水分摂取に努めてください。クランベリージュースまたはビタミンCを含んだ食品は、尿の酸性度を保つ働きがあります。

(注) 発熱や尿が濁る、腰痛(腎臓の場所)がある、吐き気があるなどの症状が現れたら、尿路感染を起こしている場合がありますので、早急に医療機関を受診してください。

便秘のとき

便秘とは、3日以上便通がない状態が続いていることをいいます。水分の十分な摂取や脂肪の適度な摂取が必要です。朝起きてすぐに水や牛乳を飲むと腸の動きが活発になります。腸内細菌のバランスを整えることも大切なので、ヨーグルトなどを毎日食べるのもいいでしょう。

摂取の工夫をしても便秘が改善しない場合は、医師に相談してください。

下痢のとき

下痢になる原因には、食事内容だけでなく、体調不良、ストレスなどがありますが、軟らかく消化の良い食事を心がけましょう。

下痢が続くようであれば、医師に相談してください。

服装

基本的には、ストーマの真上を押さえつけなければ術前の服装でもかまいませんが、お腹周りのきつい衣服は着用しない方が無難です。

女性

プリーツやギャザー、フレアーの入った服を着ると気楽でよいようです。慣れてくれば、どの程度まで体にピッタリとしたものが着られるか分かってきますので、それまであれこれ試してみてはいかがでしょうか。

男性

ストーマがベルトの位置にある場合は、スラックスのウエストサイズはゆるやかなものを選び、ベルトも心持ちゆるく締めるように工夫しましょう。サスペンダーを使うこともよいでしょう。

☆ストーマ袋には空気を入れてクッション代わりにします。下着は毎日着替えることが、臭い対策の面でも必要です。

着物

ストーマを造設しても着物を着ることは可能です。着付けをしてもらうときは、ストーマのことを相手に伝えて、帯がストーマの位置にかからないように高めにしてもらう、緩めにつけてもらう、お腹にタオルなどを巻く、など少しの工夫で、着ることができます。また、ストーマが帯で圧迫されるようであれば、ストーマの周りにドーナツ型にタオルを置くのもよいでしょう。

入浴

自宅で入浴するとき

浴槽に、ストーマ装具を取り外して入るか、ストーマ装具を付けたまま入るか、どちらでも構いませんが、装具を付けたまま入浴する方がよい人は付けたままで入ります。特に、尿管皮膚瘻の人などカテーテルが入っている場合は、装具を付けたまま入浴してください。入浴は、食前か食後しばらく経った排泄の少ない時間帯を選びます。

浴槽内では、お湯がストーマから体内に入り込むことはない(腹腔内圧のほうが浴槽内の水圧よりも高いため)ので、安心してお湯に浸りましょう。ストーマ装具を外して入浴できる人は、装具の交換日には装具を取り外して入浴します。ストーマ周囲の皮膚を清潔にし、空気に触れさせる唯一のチャンスです。

装具を付けないで入浴するときは
  1. 洗い場では、ストーマとストーマ周囲の皮膚の清拭を行い、ストーマ周囲の皮膚の観察を行います。
  2. 浴槽では、プラスチック容器(面板のフランジサイズよりも大きめで深さのある円形のもの)をストーマ部位に当てて、片手で押えます。(ストーマの粘膜からの粘液がお湯に混じるのを防ぎ、排泄物を受けるため)
装具を付けたまま入浴するときは
  1. 入浴の前に、トイレでストーマ装具の中の排泄物を処理し、空にしておきます。
  2. ストーマ装具の処置
    • 入浴用キャップやミニストーマ袋に取り替えるか、ストーマ袋を三つ折りにしてテープ等でしっかり固定します。
    • 脱臭フィルター付きのストーマ袋を装着している場合は、脱臭フィルターにお湯が入らないよう、装具の箱に同梱されているフィルターシールを貼ります。
    • 面板が全面皮膚保護剤の場合は、面板の外周にサージカルテープを貼ります。(皮膚保護剤が溶けるのを防ぎ、剥がれないようにするための補強)
  3. 入浴後、入浴前に貼ったフィルターシールをはがし、装具についている水分を拭きとります。入浴用の装具を使用した場合は、日常使用している装具に取り替えます。

公衆浴場を利用するとき

公衆浴場では、必ずストーマ装具を付けて入ります。

入浴は、食前か食後しばらく経った排泄の少ない時間帯を選びます。

浴室に行く前に、自室で準備しておくこと
  1. トイレで、ストーマ装具の中の排泄物を処理し、空にしておきます。
  2. ストーマ装具の処置
    • 入浴用キャップやミニストーマ袋に取り替えるか、ドレーナブルストーマ袋の場合は三つ折りにしてテープ等でしっかり固定します。(目立たないようにするため、ストーマ袋を小さく折りたたみ過ぎると、排泄があった時に排泄物が漏れ出したり、装具が外れたりするので要注意)
    • 脱臭フィルター付きのストーマ袋を装着している場合は、フィルターシールを貼ります。
    • 面板が全面皮膚保護剤の場合は、面板の外周にサージカルテープを貼ります。
  3. 装具の上から貼る保護シートは、肌色であまり目立たないので、着用するのもよいでしょう。
  4. タオルを1枚余分に持っていきましょう。(装具の水分拭き取り用)
  5. 万が一のトラブルに備えて、装具セットを浴場へ持参しましょう。
入浴前の脱衣所での準備
  1. 事前に浴場内のトイレの場所を確認しておきます。
  2. 脱衣所では、目立たない照明も暗い片隅を選び、周囲に人のいない場所で、衣服を着脱しましょう。
浴室内では
  1. 浴槽内では、人の出入りが少ない場所で装具を手で押さえておきます。
  2. 移動するときは、装具の部分をタオルで隠しておきます。洗い桶を持つとタオルを入れることもできるので、便利です。
  3. 洗い場では、ストーマが左にある人は左端に、ストーマが右にある人は右端に座ると人目に付きにくいようです。
入浴後の脱衣所での処理
  1. 装具についている水分は、乾いたタオルで拭きとります。
  2. 入浴用の装具や保護シートを使用した場合は、自室等に戻ってから取り替えます。
  3. 装具の密着がおかしいなど異常を感じた時は、装具セットを持ってトイレで処置します。(タオルも忘れずに)
自室の洗面・脱衣所/浴室で
  1. 浴場での入浴後、自室の洗面・脱衣所で入浴用の装具や保護シート等を取り外し、通常の装具を取り付けます。
  2. 装具の交換は、自室の洗面・脱衣所と浴室で行います。

オストメイト対応トイレ

公共交通機関、高速道路のサービスエリア、デパートやショッピングセンターなどでも、オストメイト対応トイレの設置が進んでいます。専用のトイレがある場所を知っておくと安心して外出できます。

オストメイト対応トイレには、汚物流し、ストーマ周囲のお腹を洗う時に便利な温水シャワー、手荷物用フックや棚などの設備が整っています。東海道・山陽新幹線のN700系にはオストメイト対応トイレが設置されています。

オストメイトマーク(案内用図記号)の表示

身障者トイレや多機能トイレの入口に、表示して頂きたいオストメイトマーク(案内用図記号)のデザインは下記の通り。

オストメイト対応トイレ設置場所検索

オストメイトJP

パソコンから http://www.ostomate.jp/
携帯から   http://m.ostomate.jp/

スポーツ

たいていの運動は、術後の体力回復とともに徐々に再開してかまいませんが、始める前に主治医と相談することが必要です。徐々に運動量を増やすようにしてください。ただし、腹部に力が加わるとかストーマを圧迫するようなスポーツは避けたほうがよいでしょう。スポーツを行うときは、安全性を考えて補強テープの使用やストーマ用ベルトを使用するとよいでしょう。

スポーツをする前に、トイレでストーマ袋の中は空にしておきます。また、スポーツドリンクなどで水分の補給を忘れずに行います。特に、発汗するとストーマ袋下の皮膚が蒸れて皮膚トラブルの原因になるので、汗をきちんと拭き取ることが大切です。パウチカバーを利用するのもよいでしょう。

ほとんどの運動はストーマ造設前と同じように行うことができます。マラソンやスキー、水泳などさまざまなスポーツに挑戦するオストメイトがいます。体力の回復に合わせて術前と同じようにスポーツを楽しみましょう。

格闘技など体がぶつかりあうスポーツでは、ストーマが傷つくことが考えられます。また、重量挙げではストーマ旁ヘルニアが心配です。始める前に主治医に相談してみましょう。
水泳のときには水着は無地のものより柄もののほうがパウチのふくらみが目立ちません。デザインはフレア、パレオ付きのもの、Aラインのワンピース型などを選ぶと、パウチが目立ちません。セパレートタイプのものを選ぶと排泄物を処理するときにも便利です。男性の場合はボクサー型かトランクス型のものを選ぶとよいでしょう。

旅行

体力が回復すれば、家族や友人と旅行に出かけることもできます。支部の研修旅行などに参加して、さまざまなことを体験しておくとよいでしょう

ストーマ装具は、多めに持参しましょう。体調によっては装具を早めに交換しなければならないとか、突然の排泄物の漏れなど予期せぬアクシデントが発生しすることがあるからです。

装具と用具類は、常に持ち歩くことができる携帯バックと衣類等の収納バック等とに二分して持参しましょう。この場合、携帯バックは常に手元から離さず、装具と用具類は使用した分を補充することを忘れないように。

暑い季節に車で旅行するときは、高温で皮膚保護剤が溶けて変形する恐れがあるため、装具を車のトランクに入れないようにしましょう。
旅行先では、次の行動に移る前にトイレへ立ち寄るようにすれば何かあっても安心です。バス旅行では、万が一トラブル発生でトイレへ行く時に備えて、周りの人かバスガイドに話しておくとよいでしょう。

海外旅行先では、国内のようにトイレが簡単に見つかるとは限りません。ツアーなどの自由行動で動くときは、目的地までの行動範囲内のどの辺りに公共トイレ(美術館、図書館、ホテル、デパート、教会など)があるか事前に確認しておくと良いでしょう。

洗腸の場合は、旅行先のトイレに洗腸用バックを引っ掛けるフックがあるとは限らないので、S状フックを持って行きましょう。

海外旅行先では、飲料に適さない水は洗腸にも使えないので、ミネラルウォーターを使用しましょう。共同浴場では、目立たない肌色のミニストーマ袋を装着するか、そのままストーマ袋内を空にして目立たないようにするため、ストーマ袋をくるくるとまるめてサージカルテープ等で固定して入浴しましょう。共同浴場の洗い場では、左側にストーマがある人は左端に、右側にある人は右端に位置すると隣りを気にしなくてすみます

<飛行機に搭乗するときの注意>

ストーマ用はさみはスーツケースに入れ預けましょう。このとき、手持ちの面板はストーマ孔を開けておきます。 (はさみは機内持ち込み禁止)

搭乗前に、トイレでストーマ装具の中の排泄物を流し、空にしておきます。

機内では、気圧の影響でストーマ袋が膨らむことがありますので、ガス抜きフィルター付きの製品の使用、またはあと付けのガス抜きフィルターを一時的にストーマ袋に貼るとよいでしょう。

海外旅行では、装具類は多めに持参しましょう。機内持ち込みの手荷物にも数組入れておきます。また、ストーマ用はさみは機内持込み禁止なので、ストーマ装具の面板ストーマ孔は事前に開けておきます。(預けた手荷物がなかなか届かないことがある)

機内では、ガスの発生しやすい食品や飲料水は過度に摂取しないようにしましょう。

仕事・学校生活

たくさんの方が術後、職場、学校などへ復帰しています。必要に応じて会社や学校と話し合うとよいでしょう。復帰時に会社の上司や同僚、学校の担任や友人にストーマのことを話すかどうかは個人で判断することになりますが、何かあった時のためにも一人にでも話しておくと心強いです。

また、腹部への圧迫、重量物の運搬などは避けた方がよいと言われています。

性生活

体力が回復して生活にも慣れて自信がでてくれば、セックスに対しても欲求が出てくるのは自然なことです。事前にストーマ袋を小さいものに交換する、小さく折りたたんでテープで留める、ストーマ袋カバーをつけるなど工夫しましょう。

ストーマを造設したことにより、性機能が損なわれることはありませんが、女性の場合は手術によって性交痛を感じることがあったり、男性では勃起不全などが起こる場合があります

そんなときは一人で悩まずに、主治医やストーマ外来でWOCナースに相談してみましょう。

妊娠・出産

たくさんの方がストーマ造設後に、妊娠・出産されています。ストーマがあっても妊娠・出産は可能ですが、病気との関係がありますので、望まれる方は主治医と相談してみましょう。

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